マグマ来日ライブ2019。渋谷WWWアコースティック版レビュー

フランスのプログレッシブ・ロックバンド、MAGMAが久々に来日。東京公演の初日9月20日、渋谷WWWのアコースティックライブに参加してきた。

マグマライブのチケット

先日スタジオ版がリリースされたZESSはもちろん。往年の大作K.AやM.D.K.までアンプラグドのアレンジで聴かせてもらえるという、サプライズ満載の内容だった。

2005年来日ライブの思い出

マグマのライブを聴くのは2005年の来日以来14年振り。前回は渋谷のO-EASTで観ることができた。

10代の頃によく聴いていたマグマのライブを、まさか生で体験できる日が来るとは思わなかった。しかも2004年に発売されたK.Aというアルバムは出色の出来栄え。ライブ演奏も期待通りの迫力だった。

マグマ来日ライブ2005年

(クリックで拡大)

他のプログレバンドの来日公演には、ノスタルジーを求めて出向く感じだ。全盛期のメンバーが揃わなくても、昔好きだった曲を目の前で演奏してもらえると目頭が熱くなる。しかしマグマの場合は懐かしさに加えて、「どんな新しいことをやってくれるんだろう」という好奇心も出てくる。

主催者のクリスチャン・ヴァンデはもう71歳と高齢のはずだが、2000年以降もコンスタントにスタジオアルバムをリリースしている。しかもクオリティーが半端でなく、K.Aなどは70年代の名作と比べても遜色ない。それどころか全体的な構成や盛り上げ方は、旧作以上にすごいのではと思う節もある。

そのK.A3曲を生演奏で聴けた2005年のライブは感激だった。ラストの「ハレルヤ!」連呼は今思い出しても身が震えるほど。今回も新作ZESSのほか、どんな演奏を聴かせてもらえるのか興味津々だった。

会場はシネマライズ跡地

東京で2日ある公演のうち、あえて渋谷のアコースティックバージョンを選んでみた。

そもそもZESSは序盤のコーラスが美しい曲。あのモルガン・オーギュレンがドラムを叩いているといっても、ひたすらマグマらしいミニマルなフレーズを繰り返しているだけ。何となくアコースティックでも魅力を体験できそうな気がした。

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会場の渋谷WWWとは、パルコの裏にあるシネマライズだった。北川原温の設計で有名なこの建築も、いつの間にか(2016年に)閉館してライブハウスに変わっていたようだ。

シネマライズ、WWW

2000年代に渋谷で暮らしていた頃、何度か映画を見に行ったことがある。スタッフが軍服のようなコスチュームを着ていて、変わった映画館だと思った。

MAGMA LIVE 2019/9/20

18:20頃に到着したら、建物の外にはやけに若い人たちが並んでいる。さすがにマグマを待っているわけではなく、上階WWW Xで行われる別のライブが目当てだった。

高齢化するファン層と世代交代

エントランスから地下に下りて行くと、マグマグッズの販売ブースに長蛇の列ができている。商品はTシャツや缶バッジのようなものが中心。2005年はマグマのロゴ入りネクタイが売られていて買おうかどうか迷ったが、ネタ以外に使える機会はないと考え思いとどまった。

マグマライブ、物販ブース

ライブ会場は3段構成のスタンディングで、腰を掛けて休めるところはない。次々と人が入ってきてスタート15分前には満員状態。このまま数時間立ったままで耐えられるのか不安になる。

まわりを見回せば、観客の平均年齢は50代くらいと思われる。バンドのメンバーと同世代なら、もう引退した高齢者が多いはず。まれに30代くらいの若いファンも見かけるが、さすがに10代とか20代の人はいなそうだ。

マグマライブ会場

バンドメンバーの入れ替えと同じく、ファン層にも多少の世代交代がうかがえる。パガノッティ夫妻の子供たちがバンドに加わったように、幼少期からマグマを聞かされて育ったチルドレンがいたとしてもおかしくない。

「結成50周年」というツアーのタイトルは伊達でない。こんなシニアな人たちが2時間もすし詰めで立ちっぱなしだと、倒れる人が出てくるのではないかと心配になってくる。

コバイア語によるピアノ引き語り

19時に登場したのはクリスチャン・ヴァンデ。30分ほどソロでのピアノ弾き語りが続いた。バンドではドラムを叩くイメージしかなかったが、こんなにピアノが弾けるとは知らなかった。

演奏される曲は、あいにくどれも聞き覚えがない。言葉も例のコバイア語で意味がわからないが、ときどきスキャットや身振り手振りを織り交ぜてくれるので、見ていておもしろい。

マグマのライブではクリスチャンの顔芸みたいなものもパフォーマンスの一部だ。ピアノを弾きつつ白目をむくと、まるでコバイア星人が憑依したような雰囲気が出てくる。

次にステラ・ヴァンデが登場して、練習曲のような小ネタで会場を沸かす。この方も70歳近くだと思うのだが声質は昔と変わらず、ほとんど衰えていない。

目をつぶれば往年のMAGMA LIVE。こんなおばあさん(失礼!)の喉から、美しいハイトーンのコーラスが奏でられるとは想像できない。

ZESSはドラムなしの序盤のみ

徐々にメンバーがステージに現れ、クリスチャン・ヴァンデは若手のジェローム・マルティノにピアノをバトンタッチした。全員そろったところで始まったのは、お待ちかねのZESS。

新作の紹介ムービーに出てくる収録シーンを見ても、やはりこの曲は冒頭のコーラスが白眉だ。ドラムなし。ギターとピアノ、ビルラフォンのセットでも、十分に聴きごたえがある。

5分くらい演奏したところで、原曲でドラムが始まるあたりからフェードアウトして終了してしまった。ZESSがこれで終わりだとすると、残りはいったい何を演奏するのだろう。

メンバーの年齢的にも、マグマを生で見られるのは今回の来日が最後でないかと覚悟していた。Zで始まるZESSも何となく最後の大作っぽい印象で、邦題も「…無へと還る」とか意味深な内容。アコースティックライブは葬式のように、しめやかに行われる予感がしていた。

アコースティック版K.A

一休みして始まった曲は、なんとK.A。2000年マグマの代表曲がピアノ伴奏とコーラス主体で繰り広げられた。アンプラグドなので音圧はオリジナルに劣るが、演奏の決めどころではビブラフォンが小気味よいフレーズを刻む。

まるでチック・コリアとゲイリー・バートンのデュオ演奏で、セニョール・マウスのようなアップテンポの曲を聴く感じ。クリスチャンは後ろに退いて、タンバリンを叩きながら時々ボーカルで合いの手を入れるくらいだった。

高齢になってもドラムを叩きまくる前回のライブを見ていると、演奏中に死ぬのではないかと心配になるくらい。御大にはこのくらいに適度に休んでもらった方が、安心して見ていられる。

ラストは大曲M.D.K.

残り時間的にラストのハレルヤコーラスまで演奏するのかと思ったが、K.Aは第一部で終わった。ZESSにK.Aまで聴けてすでに満足といえる状況。ステラのMCはコバイア語でなく英語なので、「来日は7回目だけどまだ日本語は話せない」など、言っている意味がわかってありがたい。

休憩後に始まったイントロで妙に会場が騒がしくなったと思ったら、次はまさかのM.D.K.だった。男性ボーカルのイザベル・フォイヨボゥワが「メカニック・デストラクティヴ・コマンドー」と叫ぶと熱気は最高潮。

高校生の頃、トゥールーズの1975年ライブ盤をCDが擦り切れるほど繰り返して聞いたM.D.K.。アコースティック版でも、20年後に本人たちの生演奏を聴けるとは鳥肌の立つ体験だ。まわりの先輩たちも、ときどきメガネを外して涙を拭くような仕草が見られた。

クリスチャンの壮絶なスキャット

後半でピアノがリフを繰り返す長いミニマルパートでは、クリスチャンがマイクを手に取りソロでスキャットを披露した。

ドラムは叩いていないが、叫びすぎて死ぬのではないかと思われるほどの絶叫パフォーマンス。老体に鞭打ってそこまでがんばらなくていいのにと思う。立って見ている方もきついが、壮絶な自虐芸とでもいえる執念のボーカルには頭が上がらない。

コーラス部隊が戻りM.D.K.をきっちり最後まで演奏して、いったんライブはお開きとなった。アンコールで披露された大人しめの楽曲は、なんだかよくわからない。自分の勉強不足かもしれないが、おそらくマグマのレパートリーには、いまだにスタジオ録音されていない佳曲が眠っているのだろう。

マグマ来日ライブのスケジュール

最後にステラが”See you tomorrow!”と言ってステージから去って行った。さすがに2日連続でライブを見る予算はなかったが、初日のアコースティックバージョンで十分満足できた。

予期していなかったK.AやM.D.K.まで聴けるというサプライズ。やはり来日公演は見ておいてよかった。この調子だとZESSで終わりなはずはない。まだまだマグマの活動は続きそうだ。